【論文まとめ】破裂脳動脈瘤について

日常

破裂脳動脈瘤についてのエビデンスまとめ

備忘録、、というか、専門医試験向けにまとめたものを載せます

参考にしたのはCEP2023 九州大学病院能脳神経外科 有村先生の講義内容です

  • 破裂脳動脈瘤の塞栓術について
  • 目的は「再破裂予防」
  • 2002年 ISAT:International subarachnoid aneurysm Trial から、開頭術に加えてコイル塞栓術のエビデンスが確立し、急速に普及した。

1)ISAT

1a) ISAT 初回報告

欧州を中心に実施された

破裂動脈瘤に対するコイル塞栓術と開頭クリッピング術の有効性と安全性を比較したランダム化試験。

コイル塞栓術、開頭術どちらでも治療可能と判断された破裂動脈瘤 2143例

コイル:1073例 開頭術:1070例 に無作為に振り分け:期間中の全症例の22%

登録された症例は

前方循環が97.3% 前大脳動脈系 50.5% 、後方循環 2.7% 

WFNS grade 1-3 が 94.2% : 軽症から中等症のSAH症例

・主要評価項目:1年後 modified Rankin scale (mRS) 3-6 (転帰不良)

➡ コイル塞栓術 23.7% VS.開頭術 30.6%

コイル塞栓術で有意に転帰不良群が少なかった

相対リスク、絶対リスク減少率はそれぞれ22.6%(95%CI:8.9-34.2)、6.9%(95%CI:2.5-11.3)

1年後死亡率に有意差なし:コイル8.1% VS.開頭術群10.1%

30日以内の再出血はコイル塞栓術群で有意に多かった コイル例20例VS開頭6例

1年後以降の再出血はコイル群で2例、開頭群でなし

すべての期間を含めた再治療はコイル塞栓術群で有意に多かった:

コイル群 136 例VS. 開頭群 34 例

Limitation : 軽症例が多い、治療前の再出血が開頭術群に多いことなどに注意が必要であるが、

本研究の結果よりコイル塞栓術・開頭クリッピング術どちらも可能な症例群に限り

コイル塞栓術の有意性が証明された

1b) ISAT 中間報告、:コイル塞栓術ではてんかんが少ない

コイル群では1年後の転帰不良の割合が低かったが、そのアドバンテージは7年後まで続いた

コイル塞栓術群では、てんかんが有意に少ないことが報告

:相対リスク比,0.52,95%CI:0.37-0.74

開頭群では脳実質への損傷やretraction、Sylvian hematomaなどの脳内血腫の影響が少なからずあるのだろうと推察。(私見)

1c ) ISAT 再治療

観察期間中央値において、

再治療は

コイル塞栓術群 191/1096例(17.4%)、開頭群39/1012例(3.8%)

調整後ハザード比 6.9,95%CI :3.4 – 14.1

コイル群では観察期間中の様々な時期で再治療が行われたことに対し、

開頭群では比較的早期の再治療が多かった

コイル塞栓術後の長期フォローアップが重要である

当時の技術かつデバイスなので、なんとも言えないが、長期間となることでCompactionなどが起こりうることを示唆している。いまのデバイスと技術、塞栓率であればどうか。とはいいつつも、現在はFDやWEBが台頭しているため、単純にコイルだけの成績を出す意義は限局的かもしれない。(私見)

1d)高齢者のサブグループ解析

65歳以上の高齢者278例の解析

主要評価項目;くも膜下出血の1年後mRS 0-2

コイル群では83/138例(60.1%)、開頭群78/140例(56.1%) 有意差なし

ICPCではコイル群で有意に多い 72% VS 52%、P<0.05

MCAではコイル群で有意に少なかった 45.5% VS 86.7%、P<0.05

➡MCAは開頭群が有利

1e) 長期成績 2015年報告。UK1664例の長期フォロー

10年後生存率はコイル群で 674 / 809 例 (83%)、開頭群 657 / 835 例(79%)

コイル群で有意に高い

(Odds 比 1.35 , 95%CI : 1.06 – 1.73 )

1003例のアンケート:mRS 0-2 の割合もコイル群で高かった (コイル 82% vs 開頭群 78 %, Odds 1.25, 95% CI : 0.92- 1.71)

1f) 認知機能、QALY

1年後の認知機能障害はコイル群で有意に少なかった(Odds 0.58、95%CI:0.38 – 0.87)

10年後のQALYはコイル群6.68%(95%CI: 6.45 – 6.90),開頭群6.32(95%CI:6.10-6.55)

コイル群で有意に良好

2) BRAT(Barrow Ruptured Aneurysm Trial):

SAHに対する単施設前向き研究、全SAH725例中の実際に治療を行った471例

コイル233例 VS 開頭群238例 に割り付けがなされ、比較解析

1年後の転帰不良(mRS 3-6)はコイル群 23.2 %, 開頭群 33.7% とコイル群で有意に少なかった

(Odds 1.68 ,95%CI : 1.08-2.61)

クロスオーバー後の解析でもコイル群の優位性が認められた(コイル群 33.9 % VS 開頭群 20.4 % , Odds 1.68 , 95%CI : 1.08 – 2.61)

6年後の解析:完全閉塞率 コイル群23/48例(48%)、開頭群 111/116例(96%)、コイル群で有意に低い、再治療率はコイル群で有意に高い(16.4% VS 4.6%)

10年後の解析:同様、コイル塞栓術群で完全閉塞率が低い結果。

  1. CARAT (Cerebral Aneurysm Rerupture After Treatment study)

1年後以降の遅発性再破裂を調査した9施設による前向き・後ろ向き双方向のコホート研究

SAH 1010例が登録。(開頭クリッピング 711 例、コイル塞栓術 299 例)。

治療後1年以降の再破裂率はコイル群で0.11%/年(1例のみ)、開頭群で0%(再破裂なし)

非常に稀。

コイル群の再治療は治療後1年以内で、7.7%、1-2年で4.5%、2年以降で3.5%であった

開頭群では1年以内で2.6%、1年以降は0%

➡コイル群での再治療が有意に多かった。

治療中の再破裂はコイル群4.5%、開頭群17.6%とコイル群で有意に少なかったが、

再破裂によるmRSの低下(中央値)はコイル群2,開頭群1

➡ コイル群でより重症。

2008年に報告された平均4年間のフォローアップでは、全体で19例に再破裂

再破裂までの期間中央値は3日 58%で死亡した

塞栓率が再破裂と有意に相関していた

コイル群で3.4%、開頭群で1.3%に再破裂が認められた

コイル群に多い傾向であったが、塞栓率を調整すると、差はなかった。

  1. JR-NET(Japanese registry of neuroendovascular therapy)

日本における後ろ向き多施設共同研究のJR-NETからも破裂脳動脈瘤塞栓術に関する論文

JR-NET ( 2005 – 2006 年 ) 1714 例

JR-NET2 ( 2007 – 2009 年 ) 3388 例 合計 5102 例について解析

多変量解析:若年、発症前mRSが低い、WFNS grade が低い、などの因子が転帰良好と関連

中大脳動脈瘤は内頚動脈瘤と比較して転帰不良(Odds 1.67)

小型・ワイドネック瘤も転帰不良

周術期合併症は虚血性合併症6.4%、出血性合併症4.5%、治療後の再破裂が1.4%

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